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古くからこの街にある診療所の院長が大坪義明という人物です。先代院長であり彼の父親でもある人物から彼はこの診療所を引き継ぎ現在に至っています。しかし、先代院長が非常にお金にシビアな人間であったにも関わらず、現在の院長、すなわち大坪義明はお金よりも人の病を助けたい、という崇高な心を持った人物なのです。

■父の後を追いかけて医師の道へ

大坪義明は幼い頃より医師になるよう父親に言われていたようです。元々彼は勉強することが嫌いではありませんでしたから大学の医学部へ入るまではスムーズにことが進んだと言われています。
しかし、彼は元々父親である先代院長とは様々な面で意見がぶつかりあっていたそうで、診療所を継ぐことは拒否していたそうです。原因は父親のお金に対するシビアさです。先代院長はお金を持っている人を優先的に治療し便宜も図っていたようですが、お金を持っていない人に対しては他の病院を勧めるなどしていたのです。
そんな父の姿を大坪義明は恥ずかしいと感じていたようです。また、自分は決してそんな医師になりたくないと強く誓っていたのです。

■先代の死と病院の引き継ぎ

彼は大学を卒業し医師免許を取得したあと県外の大病院で研修を続けていました。その後病院医師として活躍するようになりましたが、そんな折彼の父親が病気のため亡くなってしまったのです。
大坪義明は結局父親の死に目に間に合うことはありませんでしたが、結局父の残した診療所を継ぐことを決心しました。また、これまでとは方針を大きく転換し、どんなに貧しい人でもお金を持っている人でも平等に診察、治療を行うことをモットーとしたのです。
そんな大坪義明の噂は瞬く間に広がり、今では毎日大勢の患者が足を運ぶような診療所になりました。父親とはまるで違う彼の接し方に多くの方は感動したそうです。

■患者はみな平等

ある時彼の診療所で簡単な手術を行っていたのですが、その時地元では大きな力を持つ議員が急ぎで治療してほしいと秘書と共に駆け込んできました。議員はただの足の捻挫と判断したため看護師に治療を任せたのですが、議員は資金力と権力にものを言わせて大坪義明じきじきの治療を望みました。
しかし、大坪義明はそれに屈せず「今は先約のあった患者さんで手がいっぱいだから、それが不満ならよそにいってほしい」ときっぱり断ったのです。それを見ていた他の患者は改めて大坪義明に大きな尊敬の念を抱いたのです。

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